どんな×××がいい?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


軽やかな金の髪は父方の血を継ぐ確たる証しで、
祖父様も父上様も、紛うことなき日本人だというに、
やはりやはり金色の髪を生来のものとしておいで。
虹彩の淡い瞳は、光の加減によっては赤くも見えて、
親御が忙しいため一人でいることが多かったため、
泣き腫らしたせいだろかと、不憫がられたことこそあったが、
不思議とそんな風貌を面妖なと疎まれることは滅多になく。
色白で、しかも繊細な中に力強い冴えを持つお顔の造作は、
きっと理知的で頼もしいお姉様におなりだろうと褒められたし、
あまり笑ったり泣いたりしない表情の薄さも、
それは落ち着きのある、威厳をお持ちのお嬢様におなりですよと、
やはりやはり妙な期待をされたほど。

 ……………。

手の掛からない子だと喜ばれたからかなと、
ドレッサーに写る無愛想な少女が小首を傾げれば。

 いやいやそこはな、
 皆様もっと甘えて欲しかったらしいぞ

小さな肩へ行儀のいい手を置いたお兄さんが、
残念、40点だと苦笑して見せたっけ……。





     ◇◇


何かにしゃにむになることは少なくて、
ただ、飛んだり跳ねたりは好きだったので、
だったらと両親が知り合いのバレエ団へ入れたところ、
これがどんぴしゃりと相性がよく。
どんなに難しいグランジュデでも、
それは正確に躍動的に決められたし。
パドゥドゥは相手のあることとて ちょっと苦手だったが、
それでも白鳥や姫君をそれは優雅に演じきり、
あっと言う間に注目を浴び。
親御のビジネスも何とか軌道に乗ったため、
資産家のご令嬢として、
今注目のご一家…などと冠された特集の取材を受けることも増え。
あまり構ってもらえなかったけれど、それでも大好きな両親は、
寡黙な少女がそんな想いを抱えていることを、
本人の見張られた双眸の輝きや潤みと、それから
そんなお嬢ちゃまの肩を支える
頼もしいお兄さんからの的確な言葉から 十分に伝えられ。
相変わらずに賑やかとは言い難い団欒だが、
それでも…ハグなんてものを覚えたお嬢さんから
好き好きと抱きつかれることが増えた父上や祖父殿は、
相好を崩すことしきりだし。
お裁縫が上手になってた娘御に負けるものかと頑張る母上は、
お誕生日には毎年何か自作の小物を贈るので、
紅ばら様という華やかな異名を持つにも関わらず、
布製の携帯品には 必ずクマさんのアップリケがついている、
三木さんチの久蔵お嬢様だったりするのである。



 「…で、明日の予定は何かあるのですか?」
 「??」
 「明日って、何かありましたっけ?」

まだ金曜日ですよね、衣替え前の採寸とか?と
ステンレス製のマグポットから緑茶を堪能しつつ、
傍らの久蔵へ問いかける七郎次なのへ。
???と、こちらもまるきり覚えのない紅ばらさんが、
最後にとっておいた黒豆を、
はぐはぐとよぉく咬み下しつつかぶりを振るが、

 「だから、明日は何と“キスの日”だそうですよ?」

小ぶりなタブレットをお弁当箱の上へ載せ、
ほらとググったページを二人へご披露する平八なのへ、

 「…え?//////」
 「…っ。//////」

スズカケからの木洩れ陽の下、
金髪娘が揃って赤くなるのが、何かの化学反応みたいで。

 “あ、面白いvv”

猫目をたわめてくすすと微笑ったひなげしさん。
ああ、録画したかったなぁと思っておれば、
その相手である七郎次が、まずは ハッと我に返ったようで。

 「そ、そんな記念日なんてあるんですか?」
 「ええ、ほらここに。」

日本だけの話のようですけれどと付け足す平八であり、
そのサイトの記事によれば、
戦後すぐの5月23日に公開されたとある邦画の中で、
ヒロインが恋人とキスをするシーンがあったそうで。
戦後も戦後、終戦の翌年という頃合いだから、
まだまだ男女交際にも厳しい慣習が残っていた時代。
だというに、キスなんて場面が公開されるとあって
当時は随分と話題になったそうで。
そして、

 「そんな日だからと申請した 人か企業があったようですね。」
 「さすがだわ、記念日大国ニッポン。」

でも、あんまり話題にはなってないようなと、
白百合さんがすべらかな頬を押さえもって ついつい口走ったその通り、
あの聖バレンタインデーどころか、
いい夫婦の日にさえ負けている知名度かも知れず。

 「まあ、キスなんていう狭い範囲ですからねぇ。」
 「範囲って…。」

だって欧米人ならいざ知らず、
日本人って滅多にキスなんかしないでしょうがと。
自分も日本人には違いないが、育ったのはアメリカゆえ、
キスなんて挨拶代わりですよというひなげしさんに言われると、

 「それはそうでげすが…。」

さしもの白百合さんも、太刀打ち出来ずに肩をすぼめてしまうばかり。
例えば、大層親しい間柄の、それも女の子同士なんていう仲間内ならば、
スポーツ観戦していました、
応援していたチームが勝ちましたなんていう感激の中、
ハグし合って、そのまま頬へちうなんてこともあるかも知れぬ。
それは愛らしい赤ちゃんを相手に
“かわいいでちゅね”と頬にキスってことはあるやも知れぬ。
でもでも、それ以上はとなると、

 「その映画が公開された時に話題になったのと、
  特異って意味でのメーター的なものは
  さして変わってないのかもですね。」

 「言えてる…。///////」

そこは認めざるを得ないけれど、

 「あああ、でも何だか口惜しいな。」

 ヘイさん、もしかしてゴロさんとは
 おはようからおやすみまで チュッチュの応酬ですか?

 まあなんて破廉恥なコトを

 体面はどうでもいいから白状しなさい、と。

七郎次が器用にリンゴを剥いて、
まずは久蔵への“あ〜ん”をしてやり。
続いて平八へもと口許へ持ってけば、

 「………して欲しいのは山々ですが。///////」

しゃくしゃくといい音をさせて、
この時期のにしては極上の甘みと歯ごたえが素晴らしいふじを
うまうまと堪能して見せる。

 「そっか、さすがにゴロさんも未成年には手が出せないか。」
 「そ。柄になくお固いのは勘兵衛さんだけじゃないのでご安心を。」

 やん、なんてことゆーのーvv

 だってシチさんがいつもきわどいカッコしてるのは、
 少しでも軟化させたいからでしょうが。

 “今んとこ“北風と太陽”の逆Ver.だがな。”

その胸中でこそりと呟いた久蔵にも、
憎からず想うお人が いるにはいるが。

 「榊せんせえでは もっとお固いのでしょうね。」
 「というか、相変わらず妹扱いなんじゃないの?」

こぉんなに綺麗になって、しかも一途に想ってるってのに。
いくらずっと一緒にいたからとはいえ、気がつけっての、と。
やっぱり叶わぬ恋のままなのへ、同情しきりなお友達二人であり。

 “………。”

そうなんだよな。兵庫は相変わらず、オレのことをももぐみの三木さんチのキュウゾウちゃんだと思ってるみたいで。何年も一緒にいてさすがに背が伸びたことだって、話すときに屈まなくて良くなったくらいしか思ってないんじゃないだろか。

 “……。”

そりゃあサ、あの大戦のころからの生まれ変わりだってこと、なかなか思い出せなかったオレだったから。混乱させないようにって距離を置いてた頃の、癖みたいのが残ってるのかもしれないけれど。

 “……。”

でも思い出してからと思い出す前と、そんなに扱いは変わってないけどな。声が小さいからってこともあって、内緒の話をするときはおでこをくっつけてってのはそのままだし。映画のDVDを観るのだって、

 『他所のアベックがキスするとこ観ても面白くなかろ。』

あの風貌で、そんなつや消しなことを言うよな奴だし。オレが無愛想なのは、もしかして前世でも兵庫に育てられたからじゃないのかなぁ。(…おいおい)

 “でも………。”

ちょっぴり、何にか想いを馳せてから、

 「………………………………………………。////////」

 「えっ?」
 「どしました、久蔵殿。」

何を思い出したものなやら、
真っ赤っ赤になって白百合さんの肩口へ頬をくっつけ、
やんやんと照れ出した紅ばらさんであり。

 「………これは何かありましたね。」
 「ええ。」

 あんのむっつり校医め、アタシの久蔵殿に何をした。
 こらこらシチさん、そんなツッコミどころ満載な…。

報われないのはお互い様だったはずが、
何やらうらやましい展開があったらしいと嗅ぎ付けて。
これは是非とも、校医のセンセに白状させましょと、
ぎゅむと手と手を握り合う、白百合さんとひなげしさんの傍らで、
賢そうなおでこをこしこしと、
小さなこぶしでついつい擦る 紅ばらさんだったりしたそうな。





    〜Fine〜  14.05.22.


  *せいぜいデコチューどまりでしょうにね。(笑)
   何やこれというオチになっちゃいましたが、
   このところ影の薄い兵庫さんを
   出してみようと思ったら、こんな出来に……。
   もうこのまま花嫁の兄で行くか?
   結婚屋との相性の方が
   どんどん深まってるヒサコ様だしサ。(こらこら)

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